全国担い手育成総合支援協議会
寺本法律会計事務所
弁護士 飯塚 美葉
前回でご紹介したように、これまでの商法の会社に関する規定に代わって、「会社法」が制定公布され、それと同時に、「有限会社法」も廃止されることになりました。
新しい法律の施行日は、「公布の日から1年6ヶ月以内」とされていますが、来年の5月頃というのが有力なようです。
現在有限会社を経営している方は、法律施行後に、会社をヽ式会社にするか⇒限会社のまま存続させるか(特例有限会社にするか)、を選択する必要があります。
今回は、まず株式会社に移行する場合の手続と注意点についてご説明します。
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■株式会社への移行手続
会社法施行後は、これまで「有限会社○○」として営業してきた会社を、「株式会社○○」とすることができます。
変更手続は、いつでもすることができ、特に時期の制限はありません。したがって、商法施行後、しばらくの間、後ほどご説明する特例有限会社として様子を見て、その後に株式会社を名乗ることもできます。
具体的な手続は次のようになります。
(1)まず、株主総会(今までの「社員総会」と同じです)で、定款変更の決議をし、商号を「有限会社○○」から「株式会社○○」に変更します。また、必要に応じて、下記にあげた事項を定款で規定します。
(2)「有限会社○○」の解散登記と、新しい「株式会社○○」の設立登記をします。単なる商業変更登記ではありません。登記は、株主総会の日から、本店所在地では2週間以内、支店所在地では3週間以内にしなければなりません。
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■株式会社にする場合の注意点
「株式会社」にする場合には、新しい会社法の株式会社に関する規定に気をつける必要があります。特に、新しい株式会社は、定款の定めによっていろいろな形態が選択できるようになりましたので、どのような形態にするかを決めて、定款変更の際に盛り込む必要があります。
なお、現在、農業生産法人となることができるのは、有限会社(社員以外への出資持分の譲渡には会社の承認が必要)もしくは、株式の譲渡制限の定めのある株式会社とされています。そこで、農業生産法人の要件を欠かさないためには、以下の点につき留意する必要があります。
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●譲渡制限株式について
株式の譲渡につき承認を必要とする株式会社、いわゆる「公開でない会社」を選択することが必要です。有限会社の場合は定款であえて規定する必要がなかったところなので注意が必要です。また、農業生産法人以外で新しく株式会社となっても、株式譲渡について承認を要求し、部外者がいきなり経営に関与してくることのないようにしたい場合は、定款において、発行する株式の種類として、譲渡制限株式とする旨の規定、及び承認に関する手続の規定を置かなければなりません(会社法107条)。
●資本金について
新しい株式会社については、資本金の制限は撤廃されます。
●取締役及び取締役会について
取締役は必ず1名は決めなければなりません(会社法326条1項)。
取締役会を置くかどうかは、定款に規定して、どちらか選ぶことができます(同法326条2項)。
●監査役について
監査役を置くかどうかも、定款によって決めることができます。ただし、取締役会を置く会社は、監査役を置く必要があります(同法326条2項)。
監査役の職務は、会計監査だけでなく、取締役の職務にも及ぶのが原則(同法381条)ですが、定款の定めによって、会計に関するものに限定することもできます(同法389条2項)。
●役員の任期について
現行の有限会社では、取締役・監査役の任期には制限がありませんでした。新しい株式会社では、取締役の任期は原則2年、監査役の任期は原則4年です(同法332条1項及び336条1項)。なお、公開会社でなく、委員会設置会社でない会社は、定款で、取締役・監査役の任期を10年を上限として伸ばすことができます(同法332条2項及び336条2項)。
●会計参与について
会計参与は、新しくできた制度で、公認会計士または税理士を、会計参与として、会社の役員と同様に位置づけるものです。会計参与を置くことによって、中小企業であっても、計算書類の内容について信頼を得られるため、資金調達等でメリットが大きいと期待されています。
●計算書類の開示について
現行の有限会社、及び新会社法下の特例有限会社では、決算公告は要求されていませんが、株式会社では、決算公告をしなければなりません(同法440条1項)。
したがって、公告の方法について、官報に掲載、日刊新聞に掲載、電子公告(ホームページに掲載)のいずれかを定款で定める必要があります(同法939条1項)。
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